huzai’s blog

「ぼっちの生存戦略」とか「オタクの深化」とかそういうことについて考えています。

宇宙人相場

 

この作品にはそれほど嵌れませんでした。
ですから、この作品が好きで好きでどうしようもない人は見ない方が良いかと思います。

 

一応、今回は目次を添えておきます。

読んだ方はご参考にしてください。

 

コンテンツ

◆魔法の杖を失いたい

◆このパターンでよかった

◆作者のツイッターを見ているような

◆終わりに

 


◆魔法の杖を失いたい


「苦笑いする。昔、一〇歳だった頃、魔法の力があればと思った。魔法の杖が欲しかった。でも今は、魔法の杖はいらないと思う。」

ライトノベルやアニメとか、そういったものを見ていて感じたことがあるのではないだろうか。「彼らには魔法があるからいいよな」、と。
そう、彼らと彼女たちの間にはいつも魔法があって、超常的な能力があって、主人公補正がある。
もちろん、彼らになくて僕らにある「科学」とかがあったりするのだが、そんなことは忘れてしまって、彼女たちと結びつきを作った「異能」や「魔法」に恋い焦がれるわけだ。

なんでこんなことが起きるのかというと、現実は非情な物で科学的な何かを持っていても女の子を救うような機会はないし、魔法のように子供でも大人並みの力を手に入れることはできない。(お金という暴力はあるかもしれないが)
少なくとも、命の危機にさらされている女学生を通学路で助けるような経験は私には無い。そしてそれは、主人公以外の人間にも言えることなのだけど。

主人公は魔法があったから縁が結ばれたと我々は勘違いしてしまう。
特殊な出自だったから、特殊な出会いがあったから、特殊な能力を持っているから。
主人公はすべての意味で『特別』である。
それは、生まれ持って得たものであり、誰もが手にしていない魔法の杖を持って生まれたのだ。
だからこそ、現実を直視できない人間は「魔法の杖」が人生のすべてを決めるのだと考えてしまう。
「魔法の杖」が無ければ運命のあの人と出会うことはできないし、私は幸せになることが出来ない。魔法の杖があったならば、私はもっと素敵な人生を歩んでいたのに......FIN


「魔法の杖」という表現が好きです。
「魔法」ではなくて「魔法の杖」。
魔法を打ち出すための補助をする機能を持った杖。また、別の意味を付けるのならば、特別であるという証。

本来ならば、「魔法の杖」が無くてもやっていけるのだといいます。

そんなことを作者が作中では書いています。
魔法を持っていなくても結婚はできるし、超常的な能力を手にしていなくとも幸せになることはできる。

人類は衰退しましたを読んだときに思ったのが、「妖精さんを下さい」ということだった。
妖精さんがいたから彼女は救われた。
ならば、妖精さんがいない僕はあのまま狭い世界で押しつぶされるしかなかったのだろう。

良子にはメンズが居た、彼女には妖精がいた、彼は特殊な出自だった、彼女は王女だった。

そう、彼女たちには「魔法の杖」があった。
一人では立ち直れない時に支えてくれる「杖」があったし、世界と相対するだけの「力」があった。
では、そんな「魔法の杖」を持っていない普通の人間はどうすればいいのか。

魔法の杖なんかなくてもやっていける。
そう思える日はいつになったらくるのだろうか。

 

◆このパターンで良かった。

 

「知識の蓄積は順調です。このパターンに当たって良かった」

何千億とパターンを繰り返して出来上がったのが、彼らの住む世界であるそうだ。つまり、どういうことか。ループの果てにあるのがこの世界。

二つのパターンが考えられる。

1つ目は、封神演義に出てくる「女媧」のパターン
2つ目は、神様のパズルで出てきた「シミュレーション」のパターン

封神演義に出てくる「女媧」のパターン
地球を自らの故郷に似せるために歴史を何度も裏から操ってきた宇宙人。
歴史の主要人物に相対して、その国を形作るために必要な予言や力を与えてきた。

本作に出てくる宇宙人と似通っているところがある。
どちらも失われた環境を再現しようと試行錯誤を繰り返している。

正直なところ、このパターンはないと考えている。
物理的な手段による崩壊と再生を繰り返すだけの技術力があるのならば、それほど非効率的な手段を取る必要は無い。
宇宙人の感覚からしたら「何億」という試行回数はたいしたことがないものかもしれないけれど、電脳世界で行われたシュミレーションの結果を踏まえながら、現実に適応させていけば良いと考えてしまうのは私が地球人だからだろうか。

要は、効率が悪いしコストはかかるのででこのパターンは無いと考えています。
完全再現というのも難しいだろう。

●電子上でのシミュレーション
神様のパズルという作品で、宇宙をシミュレーションする話が出てくる。
本作でも出てくるが、ようはその要領でこの世界も作られているのではないだろうか、ということだ。(別の話だと「世界球」とかだろうか)
電子上の出来事ならば、シークバーを移動させるだけで人類の発生と滅亡とを繰り返すことが出来てしまう。電子世界の人間が感じる時間を超越する。死んだ人間を生き返らせることだってできる。

そうすれば、探索可能な世界を見つけることだってできるだろう。
何億という我々人類からすれば途方もない数のシミュレートの果てに安定した世界を見つけられる。
それで観測を続けて、ダメになったら、ダメになった時点からまたシミュレーションを繰り返す。

これならばコストは物理的なものよりかは抑えられる。私からするとこっちの方が現実的。

●今の世界は

どちらも、決定的な否定はできないだろう。
宇宙人の技術力がどれほどのものかは分からない。
世界そのものをコピペできるような能力を持ち合わせているのなら、物理上でも電子上でも変わらない。

また、彼らが電子上に発生したものかどうかも問題になる。
もし、電子生命だとすれば電子上でのシミュレーションは自分の世界を圧迫することになる。
そうすると、自分とは切り離された物理空間でシミュレーションをするのではないだろうか。

この世界はこれだ!、と、規定することは難しいんじゃないかな。

 

◆作者のツイッターを見ているような


この作品を読んでいて思ったのは「作者のツイッター見てるようだ」ということ。

作者は広範な知識を持っている人であるようで、呟きを見るだけでも色々な事を知ることが出来るし、興味をそそられる。本作品もそんな感じ。

へー、とか、ほー、とか言いながら読んでいた。
「金融」ってものを知らなかった私はその分だけ面白く読むことが出来た。

 

逆に、ストーリーやキャラクターはあまり嵌らなかった。
人というよりもキャラクターという感じ。
体験談が出てくる窓口に見えて、人物像が結びつかなかった。

仕組みやテーマに焦点が向いていたのが原因だと思っています。
この作品においては、人やストーリーよりもそれらを取り巻くものに興味が向いていました。だからこそ、補完も想像も弱かったのだと思います。
僕にとってのリアルは「質問くん」だけだったのかもしれない。


◆終わりに

 

実体験を持っている人は楽しい小説ではないかと思います。
実際に読みながら自分の取引体験が思い起こされることでしょう。
未体験の人はこんなに株・FXは簡単なのかと驚愕するでしょう。(簡単ではない)

SFはスパイス程度なので金融or恋愛を求めているのなら買ってみてはどうでしょうか。
しかし、金融にも宇宙人パワーが及んでいる可能性があるので、やはり恋愛だろうか。
いやいや、恋愛にも宇宙人パワーが及んでいるかもしれない。
ご都合主義を宇宙人が引き受けてくれたのだろうか。

フムン、よくわからん。
『大人』になったらもう一度読んで見ます。


それでは、成功した世界の先で会いましょう。