huzai’s blog

「ぼっちの生存戦略」とか「オタクの深化」とかそういうことについて考えています。

その恋は無価値

 

物事の価値が無くなる瞬間っていうのは、未来が無くなったときだと思っている。

 

これまで多くの終末論を目にしてきた。
今回のことを考えるのにいいのは「終末のフール」だろうか。
内容はうろ覚えだが、数年後に隕石が衝突して地球は消滅する。
そんな事実が発覚してしまった場合、人類は価値を喪失することになる。
価値っていうものは「永続性」があることを期待される。
ずっと幸せでいるとかそういう精神的なものもこれに含まれる。
もちろん、「金」とかそういう物質的な価値っていうのも永続性があって、未来があるからこそその価値が保障されている。だから、未来を失った貨幣はボロ屑になっていく。

もう少し噛み砕いてみる。

ドラクエでもなんでもいいんだけれど「敗北イベント」というものがある。
そのイベントが発生するレベルではその敵を倒すことが出来ない、とかそういうの。
もし倒したとしても敗北として処理されたり、物語には何の影響も与えなかったとする。
そうすると、「敗北イベント」を乗り越えたことの「価値」というものは無くなる。
敗北しても、勝利しても、迎える先が同じであるのならばその時の行動に「価値」はない。
似たようなのだと、ギャルゲーで好きになった子を攻略しようと努力していたものの、実はその娘は攻略不可であった、とか。
彼女を攻略する、という行動自体が「価値」を生じなくなる。

未来があるからこそ「価値」っていうものが生じてくる。
そう考えると、人間っていう生き物の末路は「死」という閉じた未来であるため、人間の価値は存在しないように思えてくる。
すべての行動の結末が「無」に還るのならば、すべての事物に「価値」など生じ得ない。

ここで反論するのもいいけれど、もう少し待とう。

そうして考えてみると、「価値」というものは存在しなくなって、「価値」という言葉が揺らぎ始める。存在するから言葉がある(これは言語論になるのだろうか)とするならば、「価値」というものはどこかに存在しているはずである。

絶対的な価値というものを除けば、この世の中には「価値」がありふれている。
社会にとって、世界にとって、みんなにとって、「価値」があるモノはこの世の中にはたくさんある。物事を相対的に見ていけばどこかに「価値」は生じてくるものだ。
つまり、相対的な価値として考えるならば、「価値」そのものが揺れ動くものであって、時や場合によって価値が生まれたり無くなったりするわけだ。

絶対的な価値はどこにあるのかというと、どこにもないんじゃないだろうか。
象徴的な価値としては「貴金属」などがそれに類するだろうが、それらも時や場所によって価値が変わってくる。
だから、きっとこの世の中には絶対的な価値なんてものは無いのだと思う。
もしも、絶対的な価値があるとすればそれは個人に立脚したものでしかありえない。外側と比較してしまえば相対的になる。比較する点を内部に持ってしまえば、自分にとっては絶対に見えたりするんじゃないだろうか。それか、比較する点すらも内包した絶対的なものを見つけるかだ。

それで、今回は「その恋は無価値」となっている。
行動・感情から生じるモノ、が「無価値」であるということだ。

彼女の恋は本当に「無価値」であったのだろうか。

私は最初に「未来が無ければ価値は生じない」といった。
例えば、ゲームでも恋愛でもスポーツでもなんでもいいのだけれど、失敗したことを考えて見て欲しい。
そういう場合って、「失敗しても次に生かせばいい」なんて言うよね。
つまり、彼らにとっては失敗すらも「価値」あるものとして取り扱われるわけだ。
失敗は失敗でなんら価値は生じないというのに、そこに何かしらの意味を見出し、それを価値と錯覚する。
まぁ、そんなことも「次」があるから言える事ですよね。
「未来」があるから言える事ですよね。

もし、失敗しても何も引き継ぐことが出来なかったらその周回は無駄になる。
失敗したという記憶すらも引き継げないとしたらその時間に価値は無くなる。

未来があるからこそ、失敗したときにもそれを「価値」として捉える事が出来るわけです。

彼女の恋に立ち返ってみると。

①未来は決まっている
②未来は無い

という二つが挙げられる。1つずつ見ていく。

①未来は決まっている
観測された未来に物事は収束する。
これは彼女自身が言っている言葉である。

つまり、彼女が恋をしたところで未来に与える影響は何もない。
恋をしてもあの結末であり、恋をしなくてもあの結末であるわけだ。
彼女の行動のすべてがあの場面に収束される。

恋の有無にかかわらず同じ結末を迎えるのならば彼女の恋は無価値だと言えるのかもしれない。

②未来は無い
彼女に待ち受ける未来は「死」である。


本来は、感情とか心とかそういったものに「価値」を見出すべきではないのだと思います。恋が実ったら価値があるとか、恋が実らなかったから価値がないとかそういうものじゃない。少なくとも、彼と彼女にとっては「意味」の在るものであったはずだ。

だから、ここでいう「その恋は無価値」というのはある種俯瞰的な意味を持っていると考えられる。

彼女の恋の行く末は世界にとって何の価値もないけれど、
彼女が死ぬということが物語の上で大きな価値を作り出す。

大事なのは彼女の「恋」ではなくて彼女の「死」
そういう意味では彼女の恋は無価値なのだろう。