プラスティックメモリーズ 3話
感情が生じさせた涙は
時間を封じ込んだ水球
―完璧な涙
◆老化
「機能の低下」「老眼」「服を着れない」「何もないところで躓く」「濡れたまま出てくる」
「服を仕舞わない」「エラー、聞き取れませんでした」etc……
81920時間。
およそ9年4ヵ月。
――プラスティックメモリーズ公式サイトより
彼女はすでに、79920時間を過ごしている。
残されたのは2000時間(約83日)だ。
自身の残り時間に近づくほど「老化」するのだろうか。
彼女の在り方を観ているとそのような気がしてならない。
しかし、他の回収されるギフティアにはそのような兆候はあっただろうか。
アイラのように、ドジっ娘であっただろうか。
そうであったならば、それでいい。
だが、そうでなかったならば、彼女は特別か、異常な存在となる。
あるいは、もうすでに時間を超えかけてしまっているのか。
でも、寿命を過ぎると人格も記憶も壊れてしまう。
――プラスティックメモリーズ公式サイトより
彼女の事を見つめ続ける。
呼び方は変わっていないか、お茶はいつもと同じ味か、
彼女は、私を忘れてしまってはいないだろうか。
◆想い出
彼ら、彼女たちは、人と同じように、感じ、喜び、悲しみ、怯える存在。
――プラスティックメモリーズ公式サイトより
別れは、悲しい。
――プラスティックメモリーズ公式サイトより
彼女は「想い出」を作ることを忌避している。
それは、想い出を引き裂かれることの辛さを知っているから。
残されるモノの辛さを知っているから。
ターミナルサービスに所属しているから分かるのか、別の理由があるのか。
それはまだ分からない。
だが、それは少し不思議な話だ。
もし、あなたのそばにもギフティアがいるのなら。
彼との、彼女との、81920時間の想い出を、どうか――
忘れないで。おぼえていて。
――プラスティックメモリーズ公式サイトより
他のギフティアの事は忘れないでいてほしいという。
が、自分のことは忘れてしまえるように行動している。
カタチにすると減ることもあるけどさ、カタチにしないと憶えておけないじゃないか。
――昔読んだ東方二次創作 主人公
カタチとして残る「プレゼント」や「遊園地」を拒むのはこういう理由からだろう。
プレゼントをみれば、当時の事を思い出される。
遊園地をみれば、あの時の楽しさが思い出される。
彼女はそういうことをしてほしくないのかもしれない。
何も無いところに自分を探してほしくないのかもしれない。
だからこそ、彼女は「機械」のままでいようとする。
共に在る、想い出を共有する存在としてのギフティアではなく、機械であろうとする。
◆自由
俺は自由になりたいだけだ
――3話予告より
他者と関わらない選択を取ることは、「自由」であることと同義だ。
他者と関わることで得られる全てに背を向け、「自由」を謳歌する。
多分、彼は知っているのだろうな。
◆何を描くのか
初めは「モノと人」を描くのだと思っていた。
違う時間を生きる二人の恋愛でも描くのかと思っていた。
だが、今は分からない。
何を描くのか、よりも彼女のことが気になって仕方がない。
静かに考えながら次話を待つ。