セカイではなく、世界を描く 世界征服/至道流星
世界のすべてを書きたい
そういって君は人間を切り捨てた
――ねぇ、まさか、この作品が真っ当だなんて思ってるの?
◆あらすじ
「世界征服。私、世界を統べる王になるの!」
”人類史上最高の知能指数”を持つ絶世の美女水ノ瀬凛。
零細企業の青年社長朝倉陣の会社に加わった凛は
革命的なビジネスプランを立案し、
会社を全体未聞の速度で成長させていく
(以下略)
――あらすじより
■ライトノベルというよりも
携帯小説の方が正しい。
徹底されたご都合主義に、テンプレ化されたキャラクター。
なろうで使い潰されたストーリーをそのままビジネス版に置き換えた作品。
小説としての面白さがどこにあるのか分からなかった。
①キャラクター
ヒロインは涼宮ハルヒの言動だけを真似した空虚な存在である。
その他はふわっとしたのとか、キリッとしたのとかそういうの。
虚構の上澄みから虚構を作り出すとこんな感じになるのだろうか。
ワッペン貼ったら人間ができあがる感じ。
②ストーリー
とりたてて書くことは無し。
③感情
世界も人間も無いというのに、どこに動かされるのか。
◆世界は真っ当ではない?
小説を真っ向から否定するようなこの作品は以下の言葉を体現する。
「ねぇ、まさか、この世界が真っ当だなんて思ってるの?」
――水ノ瀬凛
大抵の出来事は、彼女が持っている外見・能力・金で解決できてしまう。
それでも都合がつかない(つけられない)場合は、「運命」とでも呼ぶべきご都合主義で解決される。
そして、人間的な障害は世界への影響は小さいので描かない。
つまり、
この作品は世界に影響を与えうるものだけを描いた作品である。
そして誤解を恐れずに言うと、
「ご都合主義でしか、世界は変わらない」ということを描いた作品である。
現実には存在し得ないキャラクターを描き、
都合の良い出来事だけで世界が構築され、、
一人の人間の手によって世界征服が進行する。
そんな、世界とすら呼べない「真っ当ではない世界」を描いているわけである。
……別の捉え方をしよう。
この作品は小説というカタチのみを利用した啓蒙活動である。
美しい世界ではなく、
現実に在る世界の仕組みを見よ。
とかそういうの。
◆感想
4倍速で聴いても問題ない作品。
フローを抑えて、要所要所にエキスを注入した感じ。
中身も外見も好きになれませんでしたが、
表紙だけは好きでした。