huzai’s blog

「ぼっちの生存戦略」とか「オタクの深化」とかそういうことについて考えています。

弱い自分と秘めた想い――マブラヴ

過去と現在が折り重なって
一人の人間ができ上がる。

その過去と現在に優劣はない。

過去があったから現在があることには違いはないが、
過去のために現在があるというわけではない。
その逆もまた然り。

過ぎ去る時間の中で、
彼と彼女のたどり着く場所に僕らはいる。



マブラヴ

変わる心と変わらない心。

移ろいゆく現実のなか、その変化の行き着く先に、

武は一体どんな結末を迎えるのか・・・・・・。

――超王道的学園生活マニュアルより

2003年春に発売された"マブラヴ"という超王道恋愛AVG

御剣冥夜」という一人の少女が主人公の家に押しかけ、
主人公と一緒に暮らし始めることから物語は動き始める。
その影響はずっと幼馴染であった「鑑純夏」を皮切りに、
クラスメイトの「彩峰慧」「榊千鶴」「珠瀬壬姫」と主人公の関係を少しずつ変化させていく・・・・・・・・・・・・。

「絶対運命なんて言葉を放つ少女」
「焼きそばパンをくれる少女」
「女の子にしかみえない男の子」
「超王道的幼馴染」「超王道的後輩」「超王道的委員長」「超王道的先生」まで幅広く取り揃えており、
エロゲーとはなんたるかを教えてくれるような・・・・・・気がする。



・・・・・・私自身にとっては、この"マブラヴ"が初めてのエロゲーになる。
思い出として、記録として、忘れたくないことをここに記載したいと思う。

そのため、今回は一切の考察はない。
本作品は次回作に謎を残す形で終わりを迎えているが、そのことに一切触れるつもりはないし、次回作をやろうとも思っていない。

ゆえに、この作品が純粋に私に与えたモノだけを書く。

√マグロ漁船

卑怯者にたどり着ける場所はない。
『誰かの為』という言葉を使って、他人の心の内に入り込むことを恐れる人間が一番最初にたどり着くエンド。

これと同じことを私はアイマスでもやっていた。
『千早のために』と踏み込まない選択肢を選び、あたりさわりのない選択をし続けた先で、千早に怒られた。
あの時から私は変わっていないのだと思い知らされた。

『お前という人間ではどこにも辿り着けない』・・・・・・そんなエンディング。

√彩峰慧

捨てられない過去と失くせない現在

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焼きそばパンで餌付けをしてくれる少女。
委員長とどうしても反りが合わない少女。
飄々とした態度を取っているが、その裏で泣いているような少女。


失ってしまいたくない時間というものがあるような気がして、
私は彼女を一番最初に"攻略"することにした。

彼女との会話は気分が躍った。
二人が繰り広げる会話は冥夜との会話とは異なり、一言一言を噛み締めるというよりも
そのじゃれあうような会話がつくる時間と空間が好きだった。

・・・・・・だからだろうか。
時折彼女が見せる影が気になって、手を伸ばさずにはいられなかった。

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「・・・・・・・いいの?」

「・・・・・・え?」

「・・・・・・困らせればいいの?」

「・・・・・・奥さんいるのに」

「昔みたいに側にいてって・・・・・・我が儘言えばいいの?」

「・・・・・・・・・・・・」

「どうなの?」

<中略>

「・・・・・・白銀、人を好きになったことある?」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・ないなら、子供みたいなこと言わないで」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・誰でも言えるようなこと、聞きたくない」

「・・・・・・・・・・・」

「綺麗事はうんざり・・・・・・・・・・・・頭にくる」

「・・・・・・彩峰・・・・・・オレは・・・・・・・・・・・・」

「白銀はそんなやつだと思ってなかった」
――√彩峰慧 病院にて

知りたかった真実は、知りたくない真実だった。
私が好きな少女は、他の誰かが好きな少女だった。
その誰かも自分の地位や立場を捨てるほどに少女の事を想っていた。

たった一つの嘘でこじれている両想いな少女と誰かの間に入ろうとする自分を意識した瞬間、
私は、これまでの行いに対する罪の所在を唐突に意識した。

・・・・・・他の誰かを好きな少女を好きになることは悪いことなんじゃないか?
・・・・・・彼と彼女の間に自分が入ることにどれだけの意味があるんんだ?
・・・・・・自分の気持ちを突き通すことにどれだけの意味があるんだ?

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「・・・・・・けど、もう手遅れかもしれねぇな。
言っちゃいけねぇこと、言っちまったかもしれない」

「そのようなことは些事だ。
今はそなたがどうしたいかが問題ではないのか?」

「え?」

「・・・・・・何かに怯えて遠慮しているフリをするのは簡単だ」

「・・・・・・え?」

「踏み込むことで相手に迷惑がかかると思って逃げることは簡単なのだ・・・・・・」

「・・・・・・冥夜」

「だが、それでも・・・・・・・・・・・・自分の気持ちにウソをつけぬから、私はここに来た」

「・・・・・・おまえ、なんで・・・・・・そんなこと」

「ふっ・・・・・・わかりきったことを聞くでない・・・・・・」
――√彩峰慧 御剣冥夜との会話より

自分の気持ちにウソをついてまで手にした変わらない日常にどれだけの価値がある?
そりゃあ、自分の気持ちにウソをついて彩峰がみせてくれた弱さに観て見ぬふりをすることは簡単だ。
でも、そうしたら彼女はずっと過去のウソに縛り付けられたままこうして空を見続けるのだろう。

・・・・・・迷惑になるかもしれない。邪見にされるかもしれない。
それでも、彼女を想う気持ちにウソをつかずに前に進みたい。
そう、思った。


御剣冥夜

私にとって大切な”思い出”が、
彼にとっても大切な”思い出”であって欲しい。

彼女について話したいことはいろいろとあるけれど、
なんかこう、"後付け"のような気がしていてならない。
気高さとか、優しさとか、強さとか、弱さとか、そういった彼女の在り方について語ることはできる・・・・・・だが、
それは"好き"っていう結論に対して、理由を後からつけているような気がしてしまうんだ。

だから、キャプチャを貼ることにします。
思い出をアルバムに閉じるっていうのは多分、こういう気持ちを言うんだ。

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エロゲーについてのよしなしごと

初めてのエロゲーだったので、いくつか思ったことをつらつらと書き連ねます。
多分現在の私では答えがでないため何かしら他人の考えが正直欲しい所です。
いくつものエロゲーをクリアすればどこかに到達できるのかな。

◆2週目の世界について
【√彩峰慧 直後に記載したものをママコピペしております】

 これから私は2週目の世界へ飛び込もうとしている。(マグロ漁船エンドは除く)
そうした時に、私は「御剣冥夜」とどのように接すればよいというのだろうか、と思う。

今まで私が触れてきたギャルゲーは
「複数いた女性がいつのまにか一人に絞られている」というものばかりであり、
「好意を向けてくれている女性を明確に自分の意志でもって『断りを入れる』」というのは初めての体験であった。
(あるいは周回を前提としたever17等)

つまり、こうだ。
御剣冥夜をフった私が彩峰慧の物語が終わったからといって、別の可能世界の話だからといって、御剣冥夜に行為を寄せるのは卑怯ではないか、と。
それは、御剣冥夜を汚すことと同義なのではないのか、と。

それに、だ。
物語としては完結を迎えた「彩峰慧」を私はどうしろというのだ。
彼女の可能世界はここで完結したのだからといって、あの夜に彼女の肉体に刻み付けた思いまで完結したとしてしまってもよいのか?
よもやその程度の想いで「沙霧」から彼女を奪ったとでもいうのだろうか?


・・・・・・ずっと、不思議だったんだ。
ギャルゲーにしろエロゲーにしろ一人の女性と添い遂げた後に、「別のヒロイン」を攻略することを求められる。

もしプレイヤーが真に「白銀武」であったならば、添い遂げられる女性は一人であるべきであり、「それ以外のヒロイン」は攻略することなくゲームを閉じるべきなのではないのか?

プレイヤーとは誰であるというのか。
彼でないのだとしたら、なんだ。神か?
プレイヤーを物語から俯瞰した場所においてしまえば、「彼と彼女の物語」として捉えることができる。
「白銀武が御剣冥夜をフリ、彩峰慧を選択した可能世界の一つ」として捉えることができる。
だが、本当にそれでいいのだろうか?

答えはまだ出そうにない。
私自身が「白銀武であり」、「白銀武ではない」ということから「私と彼女の物語」として捉えることは誤りである。
どれだけ「現実(リアル)」に再現されたとしても、あくまでも「物語としてのリアル」であって「出来事そのもの」ではないのだから。
一方で、私という存在を彼と彼女から切り離した「一人の人間」として処理することには違和感が生じる。
エロゲーというコンテンツは特に。まぁ、うまく言葉にはできないのだけれど。

◆愛とセックスについて
人はどうして人を愛するとセックスへと向かってしまうのでしょうか?
セックスとはエロなのでしょうか?
セックスとは愛なのでしょうか?

エロゲーという体裁をとることにどれだけの意味があったのか、ということを考えてしまう。
使うために用意されたエロゲーではなく、セックスという行為に何かしらの意味や意義がエロゲーには込められているのだろうか。
あえてギャルゲーとしてではなく、エロゲーとして出されたからには、そこに何かしらの意図を勘ぐってしまう。

◆主人公のボイスについて
アンリミテッドに入ると"何故か"時折主人公にボイスが付くようになっていた。
それが私にはたまらなく不愉快でならなかった。

エクストラではなかったボイスが、アンリミテッドでつけられることによって、
『お前と白銀武は別物なのだ』と突きつけられているような気がして、苛立ったのだ。

◆全ての√は踏破されるべきか?
(先の文章と重複するが、少しだけ。)
私自身はそうする必要はないのではないかと思っている。
それこそever17のように踏破することで見られるエンディングがあるのならば別であるが、
全ての少女を攻略すること、それ自体に大きな意義を見いだせないでいる。

今回のマブラヴでは色々な御剣冥夜をみるためだけに、彩峰慧の攻略に取り掛かった。
もちろん自分の意図としては、全ての少女を攻略したのちに、御剣冥夜に臨もうと思っていたのだ。
だが、その気持ちは一人目の少女の時点で瓦解した。

「オレはおまえの気持ちには応えられない。
彩峰にふられたとしても、じゃあ次は冥夜・・・・・なんて考え方絶対に嫌だ」

「うん・・・・・」

「ごめんな・・・・・」

「・・・・・それでよいのだ。
 そなたは立派だぞ」
――√彩峰慧 御剣冥夜との会話より

みんな、どんな気持ちで"次の少女"を攻略しにいってるのだろうな。

総感想

・・・・・・各人が持っている弱さはどれも自身にとって心当たりのあるもので、
その弱さそのものを否定してしまうことは多分誰にもできないことなのだと思う。

そういう現実に存在する"弱さ"から目を背けずに、自分の想いを外に出すのは難しい。
秘めたものにしてしまえば、誰も傷つかないまま変わらない日常を過ごすことができるから。

・・・・・・けれど、変わらずにはいられない、想いを伝えずにはいられない。
壊してしまうことを恐れて、何もできない自分にはなりたくない。

次回作に謎をひっぱりすぎる本作品であるが、
表題に違わぬ"超王道"っぷりであり、初めてのエロゲーとなってよかった。

マブラヴ――弱い自分と秘めた想い END
マブラヴ(全年齢版)