huzai’s blog

「ぼっちの生存戦略」とか「オタクの深化」とかそういうことについて考えています。

今更"君の名は"を観た感想

随分と時間が経ったのだからぽっぴんQぐらいの人の入りだろうとか、
SAOが映画化したのだからこんな作品みるやつもういないだろうとか、
そんな甘い考えを持って昨年から遠ざけていた"君の名は"を観てきた。

結論から言ってしまえば、
こんな時期にも関わらずオタク以外にも人は多く存在しており"your name"っていう感じがすごくした。
けいおん!とかが好きだったサッカー部あたりの人間に刺さりそうな、そんな映画。

以下感想

コンテンツ
■その声はどこにも届かない
■僕はポエムが好きだった

その声はどこにも届かない

この作品の感想を調べて上がるのが「キレイ」「ふつくしい・・・・・・」「しゅてき」などの語群である。
映像的な美しさ、世界に響き渡る音楽、性的過ぎない可愛さ/綺麗さを保ったキャラクター。
人々の心の上をころころと滑り落ちるように2時間近い映像が流される。

私自身も「綺麗だなー」とか「きゃわいいにー」とか思ったりしていたが、
映画館を出たあたりで「この作品ってなんだったっけ?」となったのである。

『観客も瀧くんや三葉のように思い出せなくなる作品』それが、『君の名は』である。

要するに"掴むところがない"のである。
少なくとも私にとってはそうであった。


ただ、多くの人はこの作品に満足をしている。
私は満足をしていない。

その違いは"言葉"にあった
新海誠さんの昔の作品には感じられて、"君の名は"には感じられない言葉。

この作品のキャラクター達はポエムを話さない。

僕はポエムが好きだった

 練り込まれた設定や興味を引くストーリー展開など、
 "君の名は"は物語・・・・・・というよりかは作品としては良い出来だったのだと思う。

 前世というキーワードから観客にミスリードをさせておきながらも
 最後のあたりで『やっぱり前前前世じゃん!』と気づかせるギミックは
 最近はやりの叙述トリックのような感覚を与えてくれた。


 だが、この作品は人間が中心にいないのである。 

 
 だからこそ、一部の人間は全く面白くないと感じているし、
 だからこそ、新海誠さんの過去作品を観た人は違和感を感じているのである。

 
 ・・・これより前の作品では、「映像」と「音」と「言葉」で出来上がっていたものが、
 この作品からは「映像」と「音」と「物語」で出来上がっている。

 それ故にリア充受けするような"一過性の体験"として作品が完成されている。

 延々とリフレインさせる言葉はどこにもなく、
 繰り返し観る人はギミックだけを探し求める。
 そういう消費されるコンテンツのような気がしてならない。

 
 ここにきてようやく、私は新海さんのポエムが好きであったのだと気が付いた。
 「うまく歩けなくなった」とつぶやく彼女を思い出す。
 「いつか、誰かちゃんと、あたしのことを見て。」と話す少女を思い出す。

 私はポエムが好きで、物語が好きなのではないのである。
 だから私は"君の名は"が好きではない。

オタクはどこへ消えた

 映画館にはオタク!って感じの人はあまり多くはなく、
 逆にカップルやおじいさんおばあさんとかそういったアニメからは遠そうな人、が多かった気がしている。

 オタク達は多分「俺たちの作品ではない」と察してもうどこかへ行ってしまったのだ。
 今あの劇場にいるのは『興行収入』や『知名度』に引き寄せられた普通人ばかりで、
 『アニメ』や『新海誠』に引き寄せられたオタクは去って行ってしまったのである。
 
 もはやあの場にあるのは文脈とそれを共有するための場しかない。

 そう、真実はもう失われたのだ・・・・・・

視聴後メモ