huzai’s blog

「ぼっちの生存戦略」とか「オタクの深化」とかそういうことについて考えています。

【感想】僕らは白銀武になれなかった/マブラヴオルタネイティブ

とてもちいさな、とてもおおきな、とてもたいせつな、 あいとゆうきのおとぎばなし

 

――僕らは白銀武になれなかった。

マブラヴオルタネイティブ(以下オルタ)ではプレイヤーと白銀武が完全に切り離されて、一連の物語を当事者としてではなく「視聴者」として「視聴」させられることになる。

僕らはまるで映画か何かを見せられるかのような気持ちになる。

僕らの感情は置き去りにして。

 

おとぎばなしで幸せになれるのは登場人物だけで、

それを聴いていたヒトは幸せにはなれない。

 

それが、マブラヴオルタネイティブ。

マブラヴ オルタネイティヴ(全年齢版)

コンテンツ

■僕らは白銀武になれなかった。

御剣冥夜は変わらない。

■感想

 

僕らは白銀武になれなかった。

白銀武がオルタで日本人ではないことに悩んだように、

僕らは白銀武ではないことに悩み苦しんだ。

EXTRA~オルタまでの一連の物語のおいて鑑純夏への愛の中心は「過去」にある。

冥夜の登場とともに、積極的になった(ならざるをえなかった)鏡純夏が行動することによって、それまでの想い出が想起され鑑純夏√に到達する。

 

それはつまり、他の登場人物とは異なり「プレイヤーの体験=想い出」ではなく、「プレイヤーの知らない想い出」だけが彼と彼女の間に育まれているわけであり、それだけが彼と彼女の愛を構成していることになる。

 

個人的にはそれが一番ショックだったんですよね。

オルタは鑑純夏の物語で、プレイヤーの感情は関係ないと言われたみたいで。

 

EXTRAやUNLIMITEDでは少なくともプレイヤーとして「意志」を反映する場所がゲーム内に存在していたのですが、オルタではプレイヤーから「意志」を剥奪し、ただの視聴者に貶められる。その上、物語の中心にある感情は「プレイヤーの知らない想い出」であり、一切の感情移入が不可能になる。

 

つまり、僕らは白銀武の原点に触れられない。

 

そうなると、彼と彼女の感情は置き去りにしてただ戦場で繰り広げられる「意志」に注目をして、「成長」とかなんだとか語り始めてしまう。圧倒的成長↑↑を求める意識高い系の慰み者になるくらいなら、この物語は終わってしまえばいい。EXTRAでも十分に白銀武は成長していた。

 

 

 

御剣冥夜は変わらない。

オルタを始める前日までEXTRA彩峰√で冥夜が振られるシーンを繰り返し見続けていたのですが、オルタでも冥夜は変わらなかったですよね。もちろん、過ごしてきた環境が違うので異なる部分は多少あれども、その根本にある話し方や考え方、関わり方は変わっていなかった。

 

「御剣として生きていたならば絶対に知り得なかった、何ものにも代え難いものを・・・・・たくさん手に入れることができたのだ・・・・・」
「人との出会いは、どれも大切なものだ・・・・・」

EXTRA彩峰√の冥夜

「これで、ここにいる理由もなくなってしまったな・・・・・」
「冥夜・・・・・おまえ」
「何も言うな。はじめから決めていたことだ」
「・・・・・」
「明日にでもいなくなるというわけではない・・・・・」
「・・・・・冥夜」
「そなたが選んだ道の行方、見届けたいのだ」
「・・・・・え?」
「この私をそでにした男がふられる姿を見ることができるかも知れぬのだぞ?」
「お、おまえな~」
「ふふふ・・・・・」
「こういうときに、そういうこと言うかよー?」
「・・・・・ゆるすがよい。
私とて弱さを持ち合わせているのだ・・・・・」

EXTRA彩峰√の冥夜

「そのようなことは些事だ。
今はそなたがどうしたいかが問題ではないのか?」
「え?」
「・・・・・・何かに怯えて遠慮しているフリをするのは簡単だ」
「・・・・・・え?」
「踏み込むことで相手に迷惑がかかると思って逃げることは簡単なのだ・・・・・・」
「・・・・・・冥夜」
「だが、それでも・・・・・・・・・・・・自分の気持ちにウソをつけぬから、私はここに来た」

EXTRA彩峰√の冥夜

 

EXTRA彩峰√の冥夜をざっと見返してきたのですが、

何となくオルタで現れた言葉や思想の根本はここにも表れている。

もちろん、「意思」が現れ「結果」が死として残る戦場ほど重たく鮮烈なものではないですが、それでも言っていることは同じです。私にとっては。

 

感想

冥夜に会いたくてオルタを購入したので、これであればEXTRAだけでよかったなー。

異なる物語(オルタネイティブ)であってもそこから得られるものは同じだから。

 

正直な話、EXTRA~UNLIMITEDまで冥夜√を駆け抜けてきた関係もあり、いきなり白銀武が「俺は鑑純夏が好きなんだ・・・・・・」とつぶやいた瞬間に完全に醒めた。

 

その上、「今、純夏に会うのは辛いから冥夜に会って遊んでから振って、純夏のところに行こう」と考え出した時点で、俺とお前は別人だと気が付いた。

 

そこからはロクに感情移入することすらできず、プレイヤーから完全に視聴者に移り変わった。多分作者はエロゲーではなく映画か何かでも作っている気分だったんじゃないかな。

 

そこから「甲21号作戦」から「桜花作戦」まで続いていくのだけれど、

面白いくらい簡単に(というと失礼だが)登場人物が死んでいく。

白銀武も視聴者もちろん悲しんだりしているわけではあるのだが、

その一方で軽く扱われた「死」に慣れてしまいそれほどの感情が揺れない。

 

 先にオルタネイティブをやっていればまた、別だったのかな。

私にはこの物語は不必要だった。